先日、東京都台東区にある一葉記念館を訪れました。
樋口一葉という人物に関しては小学校の文学史の記憶がおぼろげながらある位で、知っている功績やエピソードは、この位…でして…本当にすみません…
- 5千円札(もうすぐ変わりますね。2022年4月現在)
- とにかく才女
- 小説「にごりえ」「たけくらべ」の執筆
- 若くして(20代で)亡くなった
書道部なので、ここでは一葉の筆跡についてレポートしたいと思います。
樋口一葉は字が上手でした
訪れて衝撃を受けたのは、一葉が達筆であったこと。
明治の人なので筆跡は全てくずし字なのですが、不肖みつまめ、書道で仮名を学び始めて〇年以上経つので、多少なりとも読むことができて有難かったです。
筆跡をなぞるにつれ、本当にとても上手でうらやましく感じました。
月前柳
※月前柳(つきまえのやなぎ)は歌会における課題
打なびく柳をみればのどかなる
おぼろ月よもかぜはありけり 夏子
※夏子は一葉の本名
なんとこれ、「月前柳」という課題に対して15歳の時に詠んだ歌です。(中学生3年生!?)
歌が詠めてしまうとは、一葉以外の当時の子女のたしなみ力にも驚愕です。
こちらは、当時一葉が通い始めたばかりの「萩の舎(はぎのや)」という塾の歌会にて、並み居る同輩をしのいで最高点をとった時の記念すべき作品だったとのことです。
この歌会では裕福な家庭の子女が晴れ着で着飾る中、一葉は古着を伸ばし直した着物(それでも着物を準備してくれた親御さんへとても感謝をしていたそうです。)で参加したそうですが、そんな中で最高点を取ったというエピソードも痛快でした。
尚、歌を詠んだのは15歳ですが、揮毫(きごう、筆で書く事)は数年後のこと。
「習い始めて1年でこんなに書けちゃうの?」と、観覧中に早とちりしてドキドキしてしてたのですが、最終的にホッとしました(凡人のひがみ?)。
いかにして字が上手になったのか
いったいどのように書を学んでいったのでしょう。
館内展示の年表から関連しそうな部分をピックアップしてきました。
1.一葉は14歳(明治19年)の時に中嶋歌子開いた歌塾「萩の舎」に入塾、和歌や書道、古典文学を学ぶことになる。(前述の受賞作品は、入塾翌年の歌会での出来事である。)
2.塾長の中嶋歌子は「千蔭流(ちかげりゅう)」という書道の流派の達人を師に持っており、一葉を始めとする門下生すべてにこの流派のの書を身につけさせていたという。
3.「萩の舎」の稽古で行われた和歌は、門下生が身につけている筆跡で清書することが習わしであり、これが文字の習得に繋がっていた。
4.一葉は18歳(明治23年)の時に「萩の舎」の内弟子となり、この時期には書道の上達が目ざましく、和歌にいたっては類題詞歌集の自選を試みるまでになっていた。
台東区立一葉記念館 館内展示より
やはりきちんとした師匠に習い、努力して修得した字だったということを確認したようです。
記念館には和歌関連の短冊が複数展示されておりますが、前述の年表の書が上達したとされる18歳(明治23年)以降の筆跡が残されております。
入塾後(習い始めて)4年で、これだけの達筆になるなんてやっぱりすごい(またしても語彙力…)
さらに上手になった秘訣
さらに、気になる一品を発見いたしました。こちら。
これは、一葉が2歳下の妹「くに」に向けてかいた「枕草子」の一説をお手本書きしたものです。
技巧に凝らずのびのびと書かれており、習いやすそうです(私も臨書したくなりました)。
手習い手本は「千蔭流」をするものが教育の場で後輩に書き与えるものだった。この「枕草子」のほか、「古今集仮名序」、「源氏物語」、「和漢朗詠集」などが手本の素材として選ばれた。
台東区立一葉記念館 館内展示より
教えることは学ぶこと。
人に教えるとなると、先輩として字を書く時の気合の入り方もひとしお、さらに書が上達したことと思われます。良いシステムです。
ましてや妹「くに」は姉同様に才媛であり、一葉から書を習ったときも瞬く間に習得していったといわれていますので、一葉としてもさぞかし教え甲斐があったでしょう。
「くに」の方も生涯家事や内職を含むあらゆる面で一葉の執筆活動を後押しし、書き残した反故の1枚に至るまでを大切に保存していた位ですから、お姉さんのことは小さいころからとても誇らしくて人々に自慢したかったにありません。
「くに」さん、作品を取っておいてくれてありがとう。
10代の姉妹が、暗い部屋の文机の上で頬を寄せ合って切磋琢磨している姿をを想像したら、ほっこりしておばちゃんなんだか涙腺が緩んでしまったよ。
以下の作品をみると、お姉さんの影響が随所にみられます。
人みなのとしの はじめの喜びも
台東区立一葉記念館 館内展示より
君平かに ませばなりけり
一葉がなくなった後の書、ということです
この時代に鍛えられた一葉の書の腕前は、その後、かの有名な小説の原稿にもいかんなく発揮されておるのです。
続きは、是非、台東区一葉記念館でご覧ください!
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