はじめての裂(きれ)選び その1

表具

『裂地(きれじ)の取り合わせ』とは

数か月前より掛軸の作り方を習い始めました。
授業はまだまだ始まったばかりですが、掛軸を作る初めの方の工程に『裂地(きれじ)の取り合わせ』という工程がある事を学びました。
掛軸の見た目デザインを決定する上で、超重要な工程です。

きれじのとりあわせ???
何だか聞きなれない言葉ですが、
『裂(きれ)』とは、掛軸専用に仕立てられた伝統的な織物のこと。
『取り合わせ』は組合せという意味なので、平たくいうと、『掛軸表面の布地を選ぶこと』です。

従来、掛軸は書や画の作品(『本紙(ほんし)』と呼びます)を引き立てる為に制作されると言われています。裂地の上に、本紙を置いてみて、ああでもない、こうでもないと考えをめぐらすのが取り合わせなのです。
親方が取り合わせ後の作業をする弟子に向かって「今夜一晩、取り合わせを考えるから今日は作業はなし(中止)だ」と言うのは良くある事だったそうです。
まるで洋品店の鏡の前で洋服をあててみて、どれが似合うか、うんうん悩んでいるかのようですね。

色紙掛(しきしがけ)を作ります

掛軸の技能習得をめざすこともあり、まずは基本の技術をしっかりと身に着ける為にシンプルな作品を作ります。
今回はあとから本紙(今回は色紙)をセットするタイプの掛軸を制作することになりました。
『色紙掛(しきしがけ)』というそうです。
感覚的に、本紙を裂地に直接張り付ける(埋め込む)タイプの方が、作業多そうだし失敗できなさそうなので一安心。

それにしても、本紙を自分でかけ替えられる掛軸って実は便利なのでは…、と無邪気に感動してしまいました。だってほら、自分の書が上達したら、しれっとかけ替えられるじゃありませんか。

色紙掛けの裂地パーツはに5種類になります(右図)。
「上」「下」と「中廻り(上)」「中廻り(下)」は同じ裂地を使いますので、選ぶ裂地は3カ所になります。

  • 上・下
  • 中廻り(上)・中廻り(下)

 掛軸は、格式高い掛軸は裂地に品格が求められますが、今回はカジュアルに色紙を飾るものなので、楽しみながら選んでみようと思います。

掛軸をプレゼントする相手を想像してみる

いよいよ「好きな裂地を3色選ぶ」というところから始まりまるのですが、箪笥2竿分あるからか、なかなか上手いこと決められません。
何故に大変なのか。
先ほど鏡の前で洋服を選ぶのに例えましたが、「本紙がない」ということは、着る人が誰なのか(性別・年齢・体形)、どういった用途か(お出かけか部屋着か)何も決まっていない状況と一緒です。
なるほど決めづらい!
…ということで、書作品を飾る前提で、飾る場所とプレゼントする相手を想定しながら裂をチョイスしてみることにしました。

  • プレゼントする人 ⇒ 父。昭和一桁生まれ。頑固。
  • 飾る場所 ⇒ 砂壁・床の間あり、の古い木造一戸建て。
  • 本紙⇒書作品。無骨な漢字。1文字or2文字

結果はこちら。

  ←かなり渋くなった。。。

お詫び
写真の技術が今一つで、裂地の特徴があまり伝えられません(例えば一番左の裂はかなり光沢があります)。
裂地には、色味だけでなく柄や光沢など、写真の100倍も奥深い美しさがあります。
魅力を伝えられるよう精進したいと思います。しばしご容赦ください。

裂の配置を考えてみる

3色決めたところで、「配置の組み合わせはによって印象が変わるかも?」と思い、前述の画像データを繰り返しコピペして、パソコン(Adobe Photoshop)で6通り組み合わせてみました。

自分の中では、②を想定して裂を選んでいましたが、並べたらそれ以外も悪くはない気がしてきました。

ただ、茶と若草色は光沢・柄が強いのに対して、白っぽい裂は素朴な風合いの生地感です。
白っぽい裂は、少ない面積部分にアクセントとして配置するにはインパクトに欠けるので、個人的に、⑤と⑥は今一つな気がします。

本紙を置いてみる

ここでやっとこさ、パソコン(Adobe Photoshop)上に書作品を配置してみることにしました。
本紙は、父の米寿(88歳)の時の色紙を引っ張りだして当てはめてみました。

サイズが変われば雰囲気もかわると思うのですが、取り急ぎこの小さい画面で見た感じ、どれが良いでしょうか。

周囲の意見を聞いてみる

結果発表~☆
家族友人による有効票数5票(皆、掛軸には詳しくない人々です)。
スマホ・タブレットの小さな画面で見てもらいました。

1番人気は②、次点が①でした(私も②が好きです。)。
従来の掛軸の書作品では、②のように上下に濃いものを配置する傾向があると聞いた事があるのですが、こうしてみると①もなかなか。
個人的には、本紙廻りの裂地のパンチ力が漢字2文字の迫力と張り合ってる感じがして、④も意外に良いのではないかと思ったりします。

いやあ、取り合わせって正解がなくて面白いですね。
もっとたくさんの作品を鑑賞して自分の引き出しを増やしていきたいと思います。

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